韓国の心情の根源にはハンがある。私の好きな予告編の映画『風の丘を越えて』で言われています。
今日『ワーニャおじさん』を見て、この映画を思い出しました。
ワーニャおじさんは崇拝していた男に幻滅し、彼に貢いで浪費した人生を後悔しています。その上経営している農園を売って株すればよっぽど稼げるなどとふざけた提案するので、逆上して彼を撃ち殺そうとするも果たせず。
これがきっかけで男と別れることになるのですが、一応仲直りして今まで通り仕送りはすると約束することに。誰もいなくなり姪と二人きりで仕事をしながら、おれの人生なんだった?本当につらいよとこぼすと、「死んだら一息つけますよ」としみじみ慰められます、というお話。
若い頃の熱狂から醒め、人生全て無駄にしたという感情に取り憑かれ、恨みがましい気持ちを最後に飲み込んで目の前の仕事を済ます。幻滅という感情の不都合なのは、変わったのは相手ではなく自分だということ。相手が憎いということ以上に自分が情けない、だけどもう奮起するには歳をとりすぎている。何もかも遅い。ちなみにワーニャおじさん47歳。もしも私を捨てるなら、17歳の私に還してよ、と言える相手がどこにもいないやるせなさ、これがハンかなと連想しました。
勤勉なのはいいけれど、どうせやるなら役に立つことをしたらどうです?と皮肉を言われて、舞台の下からこの男に殺意を覚えました。こういう心からの感情が沸き起こるのがチェーホフ劇の楽しいところです。池袋の東京芸術劇場にて。
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