2013年4月21日日曜日

『天使の分け前』 ケンローチ

閉館が決まった銀座テアトルまで昨日行きました。今日も寒いですね、長野では雪とか。
ハイランドのど田舎で発見された失われた醸造所の幻のウイスキー。これがオークションにかけられると知り、窃盗計画を練り始める。はたして首尾よく酒を盗むことはできるのか?というミッションインポシブルもの。
ハリウッドならエンターテイメントとして楽しめるストーリーですが、社会派バイアスの高いケンローチブランドとしては違和感を覚えるひともいるかも知れません。しかし初期には牧師がヤクザを暗殺するというお話も撮っていますから、ケンローチ自身はこういうのは好きそうです。

この映画のポイントは盗んだ分だけ、ハイランドモルトを混ぜて量をごまかすというトリックなのですが、これを味も分からない金持ちが何も知らずにありがたがって高い金を払うのを見て痛快と思うか、道徳的にあり得ないと捉えるかに見方が分かれそうです。
私も少々ショックでしたが、このビンテージモルトの出自自体、密かに醸造所どうして樽を交換していたということに由来しており、蔵元自体がブレントしたものをシングルモルトと称して出荷することはままあったことではないかと想像しました。

道徳問題としては手切れ金を受け取って妻子との縁を切るか、盗みで得た金で再出発するかの二択で、カントなら妻子と別れるを選ぶでしょうが、私は映画のとおりでOK。
高価なウイスキーを台無しにしたことについては残念ですが、甲子園で松井選手を4連続四球にしたのと同様この点については中途半端なことはせず、抜け漏れのないよう徹底したということでしょう。妻子のことを考えれば、犯行がばれて捕まるくらいならするべきではないのでやむを得ないと捉えます。

映画で主人公とウイスキーの出会いとなったのはスプリングバンク32年もの。4万円くらいだそうです。ちなみに1919年のが100万円だった。
将来醸造家として大成した主人公が自分の過去の犯罪をどう思うのか聞ききたいですね。

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