『ある相続人』 森の小径を二人で歩く。ビールを飲みながら自慢話。森の中で作文を朗読。以上。これのバージョン違いを続けてみて2つ比較。後の方がテンポがよい印象。2回目だからかも。朗読のカットでは後のほうが少し間をとって演出している感じ。
バレスというひとの「東方の砦」という作品を下敷きにしているそうです。
アルザス地方のドイツ占領がテーマで、見ながらドーテの最後の授業を思い出した。
いまはフランスという一つのくくりですが、もともとは別の地域らしい。そんなことを言ったらイギリスもフランスの一部になる分だが、このあたりの感覚は日本人には馴染みがないのではないか。国って何だろうとふと思う。
『ジャッカルとアラブ人』原作フランツ・カフカだそうですが、この話は知らなかった。バージョン違い見ても分からなかった。間違い探し?
『慰めようのない者』ギリシャ神話で、プルートにさらわれた妻を連れ戻しに黄泉に降りて行く話、日本にもおなじような神話があった。奥さんを連れ戻すのに失敗した旦那が当時を振り返る対話。バージョン比較では後の方が分かり易い印象だが、たんに2回目だからなのかも。
今解説を読んだら、対話の相手はこの旦那をあとで八つ裂きにするのだそうです。
『母』 ぶどう畑?で老人と夫人の対話。これはバージョン違いが3つ。3つめが一番分かり易いのは3回目だから?既に死んだ?おじいさんが自分を殺した母親へのうらみと奥さんとの初夜?の思い出を語る。「じゃあ何故殺した?!」と叫ぶおじいさんに、夫人が「では何故生んだと聞いてごらんなさい。」と答えるラストシーンが印象的。この映画は好き。
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『母』より |
解説によると、『慰めようのない者』と『母』はともにイタリアの詩人パヴェーゼの『レウコとの対話』を下敷きにしているらしい。レウコってだれ?岩波書店の『パヴェーゼ文学集成(6)』の『異神との対話』という邦訳があるそうです。これは読みたい。
『コルネイユ=ブレヒト』 コルネイユはブレヒトである、という映画なのかと思ったが、コルネイユを暗唱したあとブレヒトを読むだけ。これもバージョン3つあるが、セットで1作品ということになっているらしい。
集中力がきれ、ぼーっとしたが3番目が一番分かり易い。反戦っぽい台詞があってこれがブレヒトらしいのかな、と思った。
解説ではコルネイユの『オーラス』と『オトン』という悲劇を読んでいるとのこと。『オトン』は邦訳がないようだが、あらすじを解説してくれている論文が検索できた。それによるとタキトゥスの『同時代記』にほぼ忠実にしたがった古代ローマの政変を題材にした恋愛悲劇のようだ。主人公のオトンが終始受け身で活躍しないので一般には出来が悪いということになっているそう。しかしそのあだち充の描く恋愛漫画の主人公のように何も事件を起こさない的なところが逆に今日的。またチェーホフにも通じると思う。読んでみたいけど、だれか訳してくれないのかな。
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第4巻 岩渕氏は2013年2月に逝去・・・合掌 |
ブレヒトのテキストは『ルクルスの審問』というラジオ劇だそう。ふつうに面白いが1番目のバージョンでは何が何やら分からんかった。これの翻訳は『ブレヒト戯曲全集』第4巻で読める。埴谷雄高の『死霊』を見ながら連想した。死霊はテレビで埴谷の特集を見ただけで読んでないですが。『死霊』は亡くなった祖父の本棚にあったのをもらおうと思っていたがいつの間にか片付けれてしまいました。