お互いに似顔を書きっこするシーンで、オープンユアアイズでは美学生が試験で描くような写実的な絵であるのに対し、バニラスカイでは特長を捉えた美しい似顔絵。そしてトムクルーズに「これが僕の目に映る君」と言わせている。
ここに夢に対する現実をあくまで客観的なものと捉えるオープンユアアイズに対し、自分が見て感じたものをリアルとするバニラスカイの世界観が端的に現れている。
タイトルのバニラスカイとは印象派の描く空の色で、世界を主観的に捉える=自分の人生を自分のものとして生きるというテーマを端的に示している。
ストーリーはオープンユアアイズを踏まえたものだが、バニラスカイはこのテーマをかなり用意周到に準備していて、ベタとも思える細かい演技、小芝居、思わせぶりな台詞で夢と現実という対比で語られる何ものかや、人生の豊かな感情世界を表現している。(が、付け加えると、ペネロペやキャメロンディアスの過剰な可愛らしさには辟易した。)
もっともそれは前半のみで、後半はトムクルーズの一本調子の演技が気になってくる。もっともこれは自分をハンサムと自覚している男のエゴ、退屈さを演じきっているとも受け取れるので、彼を大根役者と決めつける訳にはいかない。が、この映画の意味の重層性を損なっているのは間違いない。
ラストはバニラスカイを背景にした屋上反省会で、オープンユアアイズを見ている観客にとっては不要。仮にデビットリンチなら、同じ結末でももっと違う描き方をしただろう。
1999年のマトリクスをつい連想してしまうが、バークリー風の懐疑論よりもそれを乗り越え、力強く生を肯定する思想により重点を置いたところにマトリクス以降の映画作品としての時代性を感じる。
オープンユアアイズの似顔絵 |
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